338人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
<痛み、移そっか?>
雛は肩に置かれた少女の手をゆっくりと退けた。
「……ううん。移さないで。残りも全部、私が受けるから」
そう言って、少女を見つめた。
少女はきょとんとした表情で、見つめ返す。
<……なんで?>
「今、壮大は私の為に、戦ってくれてるから。夢真珠の激痛は……私1人の問題。壮大に、重荷をかけたくないから」
<そっか。わかった>
ひょいっと雛から離れ、少女は背を向けた。
<雛は、優しいね。みんな、お構い無く守護に痛みを移してった。そういう使命だからってね。けど、普通だよ。誰だって痛いのはやだし>
後ろで手を組み、少しずつ歩き始める。
<君みたいな人、初めて。わざわざ苦しい方を選ぶなんてさ>
苦しい方を選んだ?
違うよ。私はね。
いつも……私の為に怒ってくれて……私の為に、戦ってくれる壮大に、私の痛みを移そうなんて、あまりにも、自分勝手過ぎると思ったから。
でも、一瞬は心が揺らいだ。……ごめん、壮大。
でも、大丈夫。
夢真珠の激痛は、私1人で、乗り越えてみせるから、壮大。
負けないでね。
頑張ってね。
最初のコメントを投稿しよう!