運命の日

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少年、壮大の言葉に雛は顔を綻ばせた。 「私は、雛。夢見雛。宜しくね、壮大」 「ん…」 雛の言葉に小さな返事を漏らしながら壮大は視線をずらした。 照れているのか、頬が赤いが本人は気付かない。 二人の自己紹介が済んだのを見届けると、雛の父が今までより僅かに低い声音で言った。 「おい雛、始めるぞ」 「……はい」 父の言葉に、雛の顔から笑みは消え、悲しげに眉が下がる。 そんな雛に、壮大は疑問を抱きながら事の次第を眺めていた。 「おい、早くしろ」 そんな雛の言葉に、返事を返しながら、従者を掻き分けて黒い布を纏った女が歩み出た。 後ろに続く従者には、鋭く光る短剣が白い布からチラチラとその輝きを放っている。 その短剣を視界に捉えた雛は泣きそうになるのを堪え、短剣から目を放さぬように唇を噛んだ。 「では只今から、第三代目夢真珠継承の儀を、とり行います」 従者が、短剣を差し出した。 女はそれを受け取り、雛に腕を差し出すように促す。 雛は震える手で袖をまくり、その白い腕を女に掲げた。 「では……」 キラリと刀身から光を放ち、短剣を構えた。
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