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深夜。
雛は布団に横になり、静かに寝息をたてている。
その横で、胡座をかいて壮大は睡魔と戦っていた。
(寝るな……寝るな俺……夜中に襲われる可能性だってなくはないぞ……)
かくんっと無意識に項垂れる頭。
壮大はぶんぶんと頭を振り、睡魔を追いやろうとする。
あまり意味はなかったが。
「ん……」
雛の声が聞こえた。
「……ちゃ……」
壮大は起こしてしまったか、とそっと雛の顔をのぞきこむ。
雛は変わらず持ち良さそうに寝息をたてている。
壮大は安心し、ほっと息をついた。
(寝言か)
「おにー、ちゃん……」
ふんわりと笑みを浮かべて雛は呟いた。
壮大はその寝言に、疑問を持った。
にーちゃん?
コイツ兄貴いたか?
義妹の狩菜ならいたけど。
……というより、夢真珠継承の時、そんな奴いなかった。
「お兄ちゃん……」
また、呟いた。
壮大は先刻の睡魔をいとも簡単に追いやった。
(兄貴……)
知りたくなった。
雛の、兄貴のこと。
雛の、こと。
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