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「うぇっ……みんなどこいったの……」
誰もいない。
誰も来ない。
まるで世界に自分一人取り残されたような感覚。
自分の声しか、聞こえない。
「ふぇ……ひとりは……やだよぉ……」
「すう!!」
「……!お、おにいちゃん……」
「探したぞ!心配させやがって」
「うぅぅ……ごめんなさい」
「……無事でよかった。さぁ、帰ろうぜ。兄ちゃんがおんぶしてやるよ」
「グスッ……うんっ」
手を差しのべてくれた時、気がついた。
あぁ、一人じゃないんだ、と。
「お兄ちゃん、大好き」
「……夢?」
雛はぼーっと辺りを見回した。
「……また壮大、そんなとこで……」
最早、壮大が雛の布団の横で、座りながら寝ている光景は日常と化していた。
その度雛は壮大を自分の布団に寝かせ、朝食の支度をする。
恒例となったこの一連の動きを済ませるが、考えていることは、いつもと違っていた。
お兄ちゃん……。
貴方は私のことを覚えていますか?
「う~ねみぃ。はよ雛」
珍しく壮大が自力で起きてきた。
物思いにふけっていた雛は、驚いて壮大を見る。
「お、おはよ」
壮大は用意された朝食の前に座り、いただきますと言って箸をとった。
雛もつられるように、朝食をとりはじめる。
不意に、壮大が視線を雛に移した。
視線に気づき、雛は首をかしげて何?と聞いた。
壮大は一瞬言うのを躊躇ったが、意を決したのか、雛に問いかけた。
「お前兄貴いるのか?」
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