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「え……本当に……お兄ちゃん……?」
知らずの内に途切れ途切れになってしまう雛の言葉。
なん、で?
そればかりが、頭を巡る。すごくいいタイミングで会えた。それは良すぎだとも言えるくらいに。夢に見て、壮大に話をして、いつもより無性に会いたくなった、この時に。
これは、偶然なのだろうか?
それとも……
兄だと名乗った男は、にっこりと笑いながら、雛の頬に手を添えた。
……お兄ちゃん、だ。
よくわからないけど、この笑顔も。
あったかくて、大きなこの手も。
お兄ちゃんなんだと何故か納得してしまう。
「んだよ忘れたのか? 俺、お前のこと忘れたことなかったんだぜ?」
頬に添えていた手を頭にのせると、わしゃわしゃと撫でた。
あぁ、やっぱりこの人は……お兄ちゃんなんだ。
「ううん。忘れてなんか、ない……。ずっとずっと覚えてたよ……」
気付けば、雛の頬を涙が濡らしていた。
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