思わぬ襲来

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「…泣くなよ」 「うぅ…だっ、て…」 呆れたように私を見るお兄ちゃん。 そう言われ、あわてて拭うけど、涙は一向に止まりそうになかった。 「…遅く、なったけど…雛。絶対に、護ってやるから。泣くなよ、な?」 「うぇ…おに、ちゃ…」 優しく言って頭を撫でてくれた。 けど、嬉しくて、嬉しすぎて、逆効果。 ますます流れ出る涙。 あ…れ? 前にも、似たことを… 同じことを、言われた気がする… 『絶対…護るから』 壮…大…。 「壮大…」 ほぼ無意識に、彼の名を口にしていた。 「違う…」 「え?」 突然降ってきた低い声。 それがお兄ちゃんのものだと気づくのに、少し時間がかかった。 「違う違う違うっ!!雛を護るのは俺だっ!守護なんかじゃない!!アイツはいらない!」 ヒステリックに叫ぶお兄ちゃん…。 私は驚くことしかできなかった…。 「っ雛!?」 お兄ちゃんの声で目が覚めたのか、壮大が家から飛び出してきた。 私が寝てなかったから、かなり驚きながら。 「雛を護るのは俺だ!!お前じゃない!今すぐ、消えろ!!」 バキィッ!! いきなりお兄ちゃんが木に拳を打ち付けた。 「お兄ちゃん!?」 私はお兄ちゃんを呼び掛けた。 でも、お兄ちゃんは何も、言わない。 ただ壮大を睨み付けている。 「お兄ちゃん!?まさかコイツが…」 壮大がお兄ちゃんを見ながら私に問い掛ける。 私はコクン、と頷いた。 その時、お兄ちゃんが木から勢いよく手を離し、こう言った。 「木火土金水…」 「木!!」 お兄ちゃんが打ち付けた木が、意思を持ったかのように、動き始めた…。
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