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「なっ!!」
突然のことに、壮大は目を見開く。
目の前では、短剣を突き立てられ、顔を歪ませる雛の姿。
「うあっ!」
ズルッ、と滝は素早く短剣を抜いた。
そして、切り口を握りしめる。滝の手は雛の血で真っ赤に染まり、雛はひたすら耐えるようにそれから顔を反らしていた。
「やめろ!!何してんだよっ!!」
あまりの出来事に飛び出そうとする壮大を、父ががっしりと押さえつける。
「離せよ親父!!」
「狼狽えるな!今、夢真珠を埋め込んでいるんだ!!」
言われ、壮大は暴れるのをやめて雛を見た。
痛みに顔を歪め苦しむ雛の姿は壮大の胸を締め付ける。
苦しんでいるのをただ歯を食いしばって見ていることしか出来ないのが、歯痒かった。
そして、滝がゆっくりと手を離していく。
「……!」
壮大は目を疑った。
短剣を突き立てられた切り口がみるみる塞がっていく。
雛の腕が完全に元通りになり、雛の父親が口を開いた。
「…これで儀式は終わりだ」
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