各々の想い

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手甲に走る、一直線のヒビ…。 雛も壮大も、ただ、驚くしかなかった― 「…脆いな…」 笑みを浮かべたまま、燦は木の鞭をしならせる。 「なん、で…土の力がこんな簡単に…」 雛は目の前に映る光景を呆然と見やりながら、呟いた。 「くそっ防いでばっかじゃ勝ち目がねぇっ!!」 壮大は燦に向けて、拳を繰り出した。 「その通りだ。だが、どちらにしよお前に勝ち目なんて、存在しない」 燦はそれをかわすと、木の鞭を操り、壮大の両手に巻き付けた。 「うっ!!」 木の鞭はギリギリと壮大を締め付ける。 「壮大っ!!」 「うぐぅ…!」 ビシビシビシ…! 「あぁっ!!」 パキン!! 「手甲が、割れた…?」 雛はただ、呆然と立ち尽くした。 土が、崩れ落ちてゆく。 そして燦はそれを見届けると、木の鞭を放心している壮大の全身に絡め、締め上げ始めた。 「ぐっ!!」 「壮大っ!!」 雛は泣きそうな声で、壮大の名を叫んだ。 壮大が死んじゃう…! お兄ちゃんに、殺される。 嫌だ。 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ 雛は頭を抱えた。 その時。 <雛っ!!君の体を私に貸して!助けてあげる!> 頭の中で、声が響いた…。
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