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「くっ…」
壮大の体を締め付ける木の鞭は、微塵の躊躇もなく、壮大の体に食い込んでいく。
「もう…消えろ」
燦は冷たく、言い放った。
「そ・こ・ま・で。やめなよ二人とも」
そっと木の鞭に手を添え、雛は二人の間に割り込んだ。
「ふっ!!」
雛が指先に力を込めると、木の鞭はふにゃり、と力を失ってだらりと動かなくなった。
「す…雛?」
壮大が不思議そうに雛を見つめ、燦はだらしなくぶら下がる木の鞭を握りしめながら雛を見ていた。
「知ってた?木火土金水の力にはね、相性があるんだよ。土は木に弱い」
クスクスと笑う雛に、壮大は戸惑いながら小さく頷く。
「そして。守護、君はまだ土の力を使いこなせてない。土は色々活用できる力だから、頑張って使いこなしなよ」
「…お、おぉ…」
「それと」
雛はクルリと燦の方を向いた。
「君もまだ使いこなせてない。木の力は、木々を操る力だから、もう少し冷静になりなよ」
淡々と述べ、雛はふっと息をつく。
「雛?どうしたんだ?」
燦が心配そうに雛に訊ねる。
「「何か…変だ」」
同時に声を発し、二人はギッ、とにらみ合う。
雛はへらっと笑いながら、ぽりぽりと頭をかいた。
「んー…と、なんていうか、私は雛じゃあないんだよ。夢真珠の化身。雛の体を借りてるの」
「「は?」」
再度重なる二人の声。
だが、今度はにらみ合うこともなく、ただ唖然としていた。
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