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少女は手に力を込めた。
すると、燦の腕から力がぬけ、するりと首から離れた。
「妹を苛めるもんじゃないよ、お兄ちゃん?」
くすりと妖艶に微笑み、少女は燦を見据える。
「…何をした…?」
ギロリと少女を睨み付けながら燦は言った。
その目は怒りに満ち、今まで雛には一度も向けなかった視線だった。
「夢真珠の力を少しだけ、注いだ。君の力を押さえてるのは夢真珠の力」
少しだけ少女の表情が曇ったように壮大には見えた。
「…力を封じ込めるのが夢真珠の力、なのか…?」
燦が少女に問う。
少女は言った。
「…そうじゃない。夢真珠の力は未知数…。化身であるわたしにも、わからない。
ただ言える事は…
夢真珠の力は与える力。
望む者に夢を与える…。
ただその夢が…」
全てが善とは、限らない。
少女の言葉が終わり、辺りは静寂に包まれた。
「くっ…」
それを破ったのは…
「くくっ…っははははははは!!」
燦、だった。
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