338人が本棚に入れています
本棚に追加
「お、お兄ちゃあん…」
ぼろぼろと涙を流す雛。
兄にすがるようにしがみついた。
「もっ…やめて…」
燦は無言で雛を払った。
雛は尻餅をつき、兄を見上げた。
無表情。
先刻の兄とはまるで別人。
雛は立ち上がり、壮大に駆け寄る。
「そっ、壮大…いっぱい血がっ…」
壮大は肩をおさえながら、雛に笑いかけた。
心配させないために…。
だが、肩を貫かれただけあり、その笑顔は苦し紛れだった。
おさえている手は真っ赤に染まっている。
「だい、じょうぶだ…。心配するな…絶対、護ってみせるから…」
だから…
「お、れを…しんじ…」
ぐらつく体。
歪む視界。
「…ろ」
そんな歪んだ視界に映っていた雛は…
何かを、言っている…。
何を言ってる…?
ドサッ…
「っ!壮大!?壮大っ―」
歪んでいた視界が…
真っ暗に、なった。
最初のコメントを投稿しよう!