雛の力

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「お、お兄ちゃあん…」 ぼろぼろと涙を流す雛。 兄にすがるようにしがみついた。 「もっ…やめて…」 燦は無言で雛を払った。 雛は尻餅をつき、兄を見上げた。 無表情。 先刻の兄とはまるで別人。 雛は立ち上がり、壮大に駆け寄る。 「そっ、壮大…いっぱい血がっ…」 壮大は肩をおさえながら、雛に笑いかけた。 心配させないために…。 だが、肩を貫かれただけあり、その笑顔は苦し紛れだった。 おさえている手は真っ赤に染まっている。 「だい、じょうぶだ…。心配するな…絶対、護ってみせるから…」 だから… 「お、れを…しんじ…」 ぐらつく体。 歪む視界。 「…ろ」 そんな歪んだ視界に映っていた雛は… 何かを、言っている…。 何を言ってる…? ドサッ… 「っ!壮大!?壮大っ―」 歪んでいた視界が… 真っ暗に、なった。
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