雛の力

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そうだ。 私がやんなきゃならないことは、 私にできること、じゃない。 私がしたいこと。しなければ後悔すること。 つまり… 壮大を助けること。 「ああああああっ!!」 私は壮大を持ち上げているお兄ちゃんに向かって、走り出した。 「っ壮大!!!」 壮大に抱きつく形で突進した。お兄ちゃんは驚いて手を離し、私はそのまま壮大を下敷きに倒れこんだ。 壮大の肩からは、いまだに止まらない血が溢れていた…。 「壮大…起きて、よ…」 小さく呟いた。 右腕から流れる、私の血。 壮大ほど流れてはいないけれど、それは私の着物の袖を濡らすには充分だった…。 さっき拭ったはずの涙がまた溢れる。 それは、中々壮大が目を開けないから。 これだけ呼んでいるのに、返事をしないから。 "死"という一番最悪なイメージが浮かんでしまったから。 そんなこと、ないよね? 「そ…だい…?」 もう一度呼び掛ける。 壮大は目を閉じたまま。 …返事、してよ…。 つうっと頬に伝う涙。 「…無駄だ」 遠くでお兄ちゃんの冷めた声が聞こえる。 ねぇ、本当に壮大は… その時だった。 しゅう…
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