雛の力

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「なっ…」 燦は突然のことに唖然とした。 雛が、徐々に強い光を放つ。 「夢真珠に、願う。兄に宿る、邪な何かを…滅して…」 雛はそう言い、両手に力を込めた。 「や、やめろ…」 燦は雛を引き剥がそうともがく。 もちろん、力で敵うはずもない。 だが… 「今、だけはっ…譲れないっ!!」 雛は必死にしがみつく。 「やめ…っ!!」 その時、燦から、黒いものが、出始めた。 「ぐあああ!!やめろっ離せ!!」 雛の背中を叩きつける。 「うぐっ!」 雛は顔を歪める。 だが…手の力は緩めなかった…。 「離せ!離せ!離せ!離せぇぇぇ!!」 力任せに、雛を殴る燦。 「はな…」 「…やめろ」 壮大が、土の手甲をつけ、がっしりと燦の両腕を掴んだ。 「やめ…!?」 その時だ。 壮大の土の手甲が、さらさらと砂にかわり、燦の両手に被さった。 「…なるほど、な」 そう言い、壮大はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。 そして、砂はカキン、と硬く固まった。 「っな!?」 目を見開く燦を無視し、壮大は目の前の雛に言った。 「…これでいいか?」 雛はますます強い光を放ちながら、言った。 「あり、がと…大丈夫」 ぎゅうっと今まで以上に、力を込めて、抱き締めた。 「ぐっ、ああああ!!」 燦の悲痛な叫びが、響いた。
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