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「ゆめみ…?それって…」
<そう>
雛が言い切る前に少女、夢美は話し出した。
<雛達、夢見一族の由来は…夢真珠になった、私の名前からきてるの…>
ふっ、と自嘲気味に笑う。
雛はただ夢美を見つめるだけしか、できない。
「ゆ、夢美」
<ん?>
遠慮がちに呼ばれた名前。夢美は雛の顔をのぞきこむ。
雛は顔を赤くして俯いている。
「わ、私今日から夢美って呼ぶからっ!」
そう言って、くるりと背を向ける。
夢美はクスッと笑ってわかった、と呟くように言った。
「あっ!そういえば夢美私に言うことがあったんじゃ?」
雛がそう言って振り返った。
夢美はぽんっと思い出したように手を叩いた。
<忘れてた。あのね、君の血で傷を治すことはできる。けど、決して多用しないで。やっぱり君にとっては苦しいはずだから。
血を出しすぎる可能性もあるし、ね。
…わかった?>
「わかった。無茶するなってことでしょう?」
そう言う雛に夢美は困ったように頭をがしがしとかいた。
<…無茶、しそう…>
夢美が呟いた。
「雛。雛。そろそろ起きろ」
響く壮大の声。
<そろそろ起きた方がいいね>
「そうみたいだね」
たちまち、雛は光に包まれた。まばゆい光の中、消えていく雛。
夢美はぼんやりとそれを眺める。
「またねっ」
雛がそう言って笑った。
夢美は小さく笑い…
<また、ね>
手をひらひらと振った。
暗い空間のなか残った夢美。
<ほんと…アイツと似てる>
夢美しかいないこの空間で、その言葉がやけに響いたような気がした。
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