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「操魔が殺られたか…」
暗がりの中、男はぼそりと呟いた。
月のない夜空を見上げているその男は、心なしか、薄く笑みを浮かべている。
「…では、燦は…」
そばにいた男が問いかけた。
「ククク…可愛い妹ちゃんから離れないだろう…」
もうアイツはあちら側だ。
「燦の妹が、夢真珠保持者なんですね?」
「ああ、その通りだ」
次は…お前が行くか?
空を見上げていた男が振り返った。
「…お任せください、彦座様。この兵馬(ひょうま)…必ずや夢真珠を奪い…」
「まぁ待て。急くな兵馬」
彦座が制止する。
兵馬、と呼ばれた青年は、黙って彦座の言葉を待った。
「一つ、言っておく。守護である、壮大が厄介だ」
木火土金水の力を持っている。
すると、今まで無表情だった兵馬が、口元に弧を描いた。
「ご冗談を…彦座様。俺の敵じゃあありませんよ…」
それを聞き、彦座は満足そうに笑う。
「…そうだな。お前は、金の力を持つ強者。期待しているぞ」
そう言い、彦座は闇に消えていった。
兵馬は誰もいなくなったこの場所で、呟いた。
「御意…必ずや夢真珠を…手土産に持ち帰りましょう」
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