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「操るに、魔。文字通り、人にとりついて操る彦座の手足的存在の妖怪だよ。
まぁ、実体はないに等しいんだけどな。
意思なんて持ち合わせちゃいない。
ただ忠実に主の命じたターゲットにとりつき操る」
雛は無意識に胸の前で拳を握った。
壮大はしばし俯いたあと…
「何でそんな明確に覚えてんのに彦座のことはわかんねーんだよっ」
「だから暗示かけられてたって言ってんだろ!」
「二人とも落ち着いてってば」
雛は、二人を宥めながら考えていた。
彦座のことを。
兄を影で操っていた人物。目的は、確実に雛の夢真珠だろう。
名前はわかったのに、他は何一つわからない。
兄を操っていただけあって、多少なりこちらのことは知っているはずだ。
それが、不安でならない。
今彦座がどう動いてくるか全く予想がつかなくて。
存在は知っている。
なのに、それは雲のように、不確かで。
蠢いている闇が、いつ自分たちに向かってくるかわからない。
雛はただ、夢真珠の宿る腕を見つめていた。
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