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懐から出したのは一本の短刀。
兵馬はシピッと短刀で空を切ると、壮大に向かって走り出した。
素早く短刀を振り、壮大を斬りつけようとする。
壮大はギリギリでかわしてはいるが、徐々に後退していた。
ドンッ
壮大の背が、木の幹に当たる。
兵馬はニヤッと笑い、壮大に向け短刀を振り下ろした。
ガキンッ
壮大は咄嗟に両手を交差させてかざし、短刀を土の手甲で受け止めた。
その時…
「木火土金水…金」
口元を歪め、兵馬が呟いた瞬間…
短刀がグニャリと変形し、壮大の両手に絡みついた。
「なっ!?」
「壮大っ!」
雛の声が響く。
兵馬は懐から鎖を取り出すと、壮大の足に巻き付けた。意思を持っているかのようにくねくねと鎖はキツくキツく壮大に食い込む。
「くっ!」
壮大は痛みに顔を歪める。
「そっ、壮大!!」
駆け寄る雛を、兵馬がひょい、と担ぎ上げた。
「きゃっ!?」
「雛っ!」
地面に這いつくばりながら顔を上げ壮大は雛を呼ぶ。兵馬は冷たく壮大を見下ろすと、雛を抱き上げる形で背を向け歩き出す。
「俺は、命を奪うのは好かん。夢真珠は、もらっていくぞ」
「や、離して!」
バタバタと雛は暴れるが、効果はなかった。
「…大人しくしていろ。不本意ではあるが、守護を殺してもいいんだぞ」
「!!」
それを聞いて、雛は抵抗をやめた…。
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