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刃が何かに当たった。
カチリという音が聞こえ、兵馬は雛の腕の切り口に一層深く突き刺した…。
「うっ、あぁ!!やめ…」
そして、そのまま夢真珠を引き摺りだそうと雛の腕で刃が動く。
「い、たっ…もっ…やめ、て…」
そう訴える雛を無視し、兵馬は尚刃を動かす。
「―――――やめろ!!」
ズリュッと刃が引き抜かれ、兵馬も雛から離れた。
雛は切り裂かれた腕を押さえ、肩で息をしている。
「…ったく…。派手にやってくれたもんだね」
雛…いや、夢美はギュッと傷口を押さえる。
「致し方ない。夢真珠を彦座様にお渡しするためだ」
「彦座、ね。あのオッサン一体いくつよ」
傷口を押さえる夢美の指の間からわずかに光がもれる。
塞がっていく傷口。
兵馬は問いに答えず、夢美を凝視する。
「…貴様、雛じゃないな…」
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