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倒された禍斗から無尽蔵の勢いで吹き出してくる血液の、むせ返るような匂いが充満している廃屋の中にいるのだ。
普通の人間ならば、吐き気を催しそうな光景を前にして、二人は至って冷静だった。
「んな事より。お前、シスターぁげほぉっ」
少女をシスター呼ばわりした時点で、見事なボディブローが彼のみぞおちに炸裂する。
あまりの衝撃に、みぞおちを押さえたまま何も言えなくなって、シュバリエはただ無惨にもがいている。
それなのに少女は無慈悲にも冷酷な表情で見上げたが、心なしかその視線は見下しているようにも見えた。
「私、リュシュターに何か御用かしら?」
尚もみぞおちを押さえながらシュバリエが睨み返すが、少女、リュシュターは一向に気にしない様子で続ける。
「報酬ならば受け取っていません事よ」
「いいか、リュー。人間は俺達と違って、信仰心だけでは生きていけないんだぞ。それをお前は、“世直し”だとか言って、無償で化け物退治に励みやがって。少しはまともに喰えよ」
ようやく痛みを受け流せたのか、赤い瞳で真っ直ぐに、リュシュターを見詰めながら珍しくまともな事を言う。
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