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その事実に彼女はいつになく怯んだようで、一歩二歩と後退すると、少し頬を赤らめて答えた。
「絶食する事も、修行の一つですわ」
しかし、そう返したは良いものの、やはり心のどこかで言い訳臭いのを自覚しているのか、先刻までの自信に満ちた表情は何処へやら。
シュバリエからそっぽを向いてしまい、照れ臭そうに小さくため息を吐く。
そんな様子に気付かない素振りを見せて、ため息を吐くと、新たな煙草に火を点ける。
「塩とパンだけでも喰っとけよ」
少女の傷付いたような、それでいて伺うような表情を見ながらシュバリエは、紫煙を吐き出しそう呟いた。
彼女が頑なに絶食を敢行する理由を、シュバリエは知っている。
その理由とは、シュバリエが好んで人間の食物を口にしないからというものだった。
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