第一章・―闇の中の攻防―

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 だらしなく唾液をたらし、大きくひらいた口から鋭い牙を覗かせながら、殺気を放って威嚇している。  それをものともしない迫力で、対峙している彼が左腕を掲げて叫ぶ。 「行くぜ!」 「ま、待ってシュバリエ!」  そうしてスタイリッシュに、勢い良く飛び出そうとした彼の背中に、少女が思いきり蹴りを入れた。 「グフゥっ」  それで彼は、勢い良く顔面からコンクリートの地面へと突っ伏す。  それと同時に、シュバリエの周囲に発生していた疾風も立ち消え。後には今にも飛びかからんばかりの、禍斗の唸り声だけが響く。  しかしリュシュターは構わず、背中に白い足跡が残るシュバリエに、真面目な声音で言った。 「あ、アレは殺さず捕らえて欲しいのよ。シュバリエ……」  残念ながら、思わぬ相手からカウンターを喰らったシュバリエの反応はない。  依然地面に突っ伏したままで、しばらく待っていた様子の少女は、やがて痺れを切らしたように、無慈悲に力一杯背中を踏みつけだしたのだ。
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