601人が本棚に入れています
本棚に追加
だらしなく唾液をたらし、大きくひらいた口から鋭い牙を覗かせながら、殺気を放って威嚇している。
それをものともしない迫力で、対峙している彼が左腕を掲げて叫ぶ。
「行くぜ!」
「ま、待ってシュバリエ!」
そうしてスタイリッシュに、勢い良く飛び出そうとした彼の背中に、少女が思いきり蹴りを入れた。
「グフゥっ」
それで彼は、勢い良く顔面からコンクリートの地面へと突っ伏す。
それと同時に、シュバリエの周囲に発生していた疾風も立ち消え。後には今にも飛びかからんばかりの、禍斗の唸り声だけが響く。
しかしリュシュターは構わず、背中に白い足跡が残るシュバリエに、真面目な声音で言った。
「あ、アレは殺さず捕らえて欲しいのよ。シュバリエ……」
残念ながら、思わぬ相手からカウンターを喰らったシュバリエの反応はない。
依然地面に突っ伏したままで、しばらく待っていた様子の少女は、やがて痺れを切らしたように、無慈悲に力一杯背中を踏みつけだしたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!