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この世界に生きてきて初めて、神に選ばれたこの少女は臆する事なく、シュバリエの瞳を見詰め返してくれた。
それは、たった一人の少女が起こした小さな奇跡。
それだけだったが、シュバリエにとってはそれが全てだった。
あの時、あの瞬間、彼は心の底から少女の命を護りたいと思ってしまった。
例えそれが、少女の全てを握る契約によるものだとしても、それで繋ぎ止めておけるのならば……。
シュバリエが他のどんな契約主にも抱いた事のない感情は、いまだ深淵で燻っている。
今はまだ、束の間の休息を味わっていたいと、そう願う彼の思いは残念ながら届かない。
不意に頭の隅でちりちりと刺激するものを感じ、リュシュターを抱きしめる手に思わず力がこもる。
それだけでリュシュターが目覚めてしまったようで、眠そうな目をこすり彼を見上げてくる。
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