第二章・―喧嘩と依頼―

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 この世界に生きてきて初めて、神に選ばれたこの少女は臆する事なく、シュバリエの瞳を見詰め返してくれた。  それは、たった一人の少女が起こした小さな奇跡。  それだけだったが、シュバリエにとってはそれが全てだった。  あの時、あの瞬間、彼は心の底から少女の命を護りたいと思ってしまった。  例えそれが、少女の全てを握る契約によるものだとしても、それで繋ぎ止めておけるのならば……。  シュバリエが他のどんな契約主にも抱いた事のない感情は、いまだ深淵で燻っている。  今はまだ、束の間の休息を味わっていたいと、そう願う彼の思いは残念ながら届かない。  不意に頭の隅でちりちりと刺激するものを感じ、リュシュターを抱きしめる手に思わず力がこもる。  それだけでリュシュターが目覚めてしまったようで、眠そうな目をこすり彼を見上げてくる。
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