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シュバリエが、真剣な声音で告げた。
「どうやら出たみたいだぜ、シスター」
ゆっくりと少女の身体を引き離しながら言う。
それから素早く立ち上がり、少し遅れて立ち上がった少女の衣服を、かがんで整えてやる。
「街の中心部にいるようだ」
「分かりました」
リュシュターが頷くと、彼は背筋を伸ばして続けた。
「俺が先に行く。シスターは俺が合図したら、後から追ってきてくれ」
言っている間にも、準備を整えたシュバリエの周囲に、蒼い疾風が巻き起こる。
シュバリエが起こした蒼き疾風によって、金糸の髪がふわりと優雅に舞い上がる。
蒼き疾風に巻き込まれる黄金色はとても幻想的で、しばしそれに見惚れていると、リュシュターが口をひらいた。
「シュバ、くれぐれも気をつけて」
久し振りに単独で闘う彼を心配しているのか、胸のクロスに両手をやり、祈るような仕草を見せる。
それは彼にとってあまり意味のない祈りとも言えたが、そうとは告げずに優しい笑みを浮かべて少女を見ると、“大丈夫だ”と返す代わりにウインクしてから姿を消し去ったのだった。
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