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一陣の蒼い風と共に、シュバリエが姿を現す。
昼間は人間が行き交い、賑わっていたであろう大通りも、深夜ともなるとさすがに誰の姿も見えない。
街灯すら寿命を終えようとしているのか、危なげに明滅している。
静まり返った道で、シュバリエが一人、靴音すら響かせずに周囲に気を配りながら歩き出す。
先刻感じた気配、それは間違いなく“昏きもの”の能力から感じられたものだ。
そう間を置かずやってきたのだから、誰かしら人間が襲われている最中でもおかしくない。
それなのに気配は、シュバリエがこの場に辿り着いた瞬間から消え去っていた。
これではまるで、彼の方がおびき出されたように思える。
まんまと相手の策に乗せられたのかと、長いため息を吐いたシュバリエは立ち止まる。
――昨夜の時点で分かっていた事なのかも知れない。
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