第三章・―“昏きもの”との攻防―

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 シュバリエに“昏きもの”の気配が読み取れるならば、それは相手も同じ事だ。  ましてや、禍斗を倒すために先に能力を使ったのは彼の方だ。  ならば、相手もそれなりに慎重に動いていたとしてもおかしくはない。 「出てこいよ」  シュバリエが見えない相手に声をかけるが、返ってくるのは沈黙のみ。  それでも辛抱強く待っていると、突然横手の建物から見知らぬ女性が飛び出してきた。  倒れる寸前に片手で受け止めた彼が体勢を僅かに崩す。  その瞬間、遥か前方から物凄い勢いで飛び出してくる“何か”に、彼は何の防御をする暇もなく吹き飛ばされてしまった。  激しく響く爆音と、立ち上る煙。  それを見詰めるのは、鋭く赤い瞳の“何か”。  全身木彫りで作られた鹿のような格好で、雄雄しく猛った角が印象的な姿をしている。
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