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“何か”が、瓦礫に埋もれてしまった箇所を見詰めて唸り声を上げた。
だが、何の反応もない。
それで“何か”は痺れを切らしたように一声鳴くと、瓦礫の山に突進して行った。
その背中に降る、容赦のない声――。
「お前、使い魔か?」
“何か”が派手な音を立てて止まり振り返るが、赤い瞳には、生憎何も映っていなかった。
不思議な現象であったのか、獣らしく首を傾げる“何か”の背後で、再び声が降る。
「その姿、ヒイシ、だな」
“何か”、ヒイシが素早く声のした方を振り向くと、そこには無傷のシュバリエが立っていた。
それを見たヒイシが、悔しそうに咆哮する。
それが耳障りな雑音のように、頭を横に振った彼は、懐から煙草を取り出しながら余裕の表情で言った。
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