第三章・―“昏きもの”との攻防―

5/23
前へ
/1105ページ
次へ
「不意打ちは卑怯だよって、パパとママから教わらなかったか?」  そうして煙草の煙を吐き出すと、赤い瞳を鋭く光らせて続ける。 「そういう子には、お仕置きしてやらねぇとな!」  言い切らない内に飛び出すシュバリエと、それに反応して飛びかかってくるヒイシの一騎討ちが開始される。  彼の繰り出した蒼い疾風と、ヒイシの頑丈そうな角とが交差する。  飛び散る火花に目もくれず、角を掴んだシュバリエが重そうな巨体をものともせずに投げ飛ばすと、成す術もなく瓦礫の山に飛ばされてしまったヒイシがよろめきながら苦しそうに呻いた。  その間にも、先刻安全な場所へと避難させていた女性の方へと走り寄ったシュバリエは、俯いたままの背中に声をかけた。
/1105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

601人が本棚に入れています
本棚に追加