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――風がお前を案内する。
言葉と共に少女の身をまとったのは、僅かな浮遊感。蒼い微風に支えられて、リュシュターの身体は僅かだが確かに宙に浮いていた。
ふわふわと不思議な感覚に陥り、少し落ち着かない気分ではあるが、それで気持ちが悪いのかと言えば、すぐにそうとも答えられない。
むしろ感覚としては、気持ち良い方だと言えるだろう。
リュシュターはそんな不思議な感覚に包まれながら、一刻も早くシュバリエの下へ行ける事を願う。
――汝が身は、我が手中に。
その祈りを感じたのか、まるで呪文のようにシュバリエが唱える。
そんなたった一言で、少女の身体は煙のように廃墟から消え去っていた。
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