産声

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産声

567は不確かな生命線を猫の細い陰毛で撫でつけることに躍起になっていた。 それは890と運命線をこねあわせた固形物で黒光り。 固形物は生きている限り567の中で肥大化するものだった。その上では飛行船がかしましくこの世の道しるべを説いて回っている、偽善者め。すがりつくは破綻のみだ。皮膜を破ればじゅくじゅくと溶血しているのが感応できる。幼い魔女がその飛行船に陵辱され泣いている。血の雨が降る、この世で最も清い雨。その雨に降られ荼毘に付す若者達。彼らもまた口惜しさに苦しんだのだ。粘膜で目を口を耳を鼻を鈴口を肛門を、穴という穴を塞ぎ体液で満たされて結果破裂することを潔しとしみんな死んでいった。パイプカット主義者は彼らの最後の抵抗に見向きもしなかった。567は憔悴しきった顔でそれらを眺めるしかなかった。煙草を揉み消した手には皮膚が張りついていた。ふっくらと柔らかい皮膚。それは紛れもなくiuoのものだった。試しに自慰行為をしてみた。がしかし痛かった。7倍の記憶は薄められた。合点がいくことは純潔であるということだった。こんなの虚しい。安定感が欲しかったのにこれでは意味がないではないか、孤独が耳を撫でる。567の色感は渇いていた。怖いのだ、手がちぎれそうなくらいに、567はiuoを愛していたから。567は独りよがりを嫌った、しかし実際は独りよがりでしか成り立たないところまで自分の精神が侵されていることも知覚していて、ようするに矛盾を孕んでいる母体にくるまって眠る赤子だった。
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