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「…………」
目が覚めてもやっぱり夢じゃなかった。
私どうなるんだろう。
「マリア様、失礼致します」
ふすまがスッ、と開いて着物を着た女の人が部屋に入って来た。
戦国時代って感じがする着物着てる。
現代のドラマって結構忠実に再現されてるんだ。
「初めまして。鈴(スズ)と申します。信長様よりマリア様のお世話を仰せつかりました。以後、何か不自由が御座いましたら鈴をお呼びくださいませ」
深々と頭を下げる女の人。
「そ、そんな畏まらないでください。とりあえずよろしくお願いします」
慌てて私も頭を下げると、彼女は私以上に慌てて私を止めた。
私そんな偉くないのに。
昨晩、信長にマリアと名乗ったことがきっとこの待遇の原因なんだろうな。
本物のマリア様には悪いし、後で誤解解かないとね。
「あぁ、信長様がこちらのお召し物を召されたらお部屋に、と申しておられました。お一人で着付けできますか?」
そう言って差し出されたのは、戦国時代のドラマとかでお姫様がよく着てる着物だった。
真っ白な生地に紫の大きな花が豪快に咲いていて、金の刺繍で縁取られている。
キャバクラ嬢になって約2年。
それなりに人気もあって、少し高めのワンピースとか着てたけどこんな豪華なのは初めてだ。
「良いんでしょうか? 私なんかが着て」
「信長様がマリア様にと急いでこしらえたのです。信長様にお姿見せてあげて下さいませ」
どうやら私には拒否権がないようなので鈴さんに着付けを頼むことにした。
あれよあれよと言う間に着物を着せられて私は鏡を覗き込んだ。
「お似合いで御座います」
鈴さんがそう言ってくれたけどやっぱりブロンドに着物って変な感じ。
「黒髪じゃないから変じゃないですか?」
「変な訳がありません!光り輝く日輪のようなお色なのですね」
「にちりん……?」
「お日様のことにございます。お羨ましいですわ!」
羨ましい、という言葉に心臓がドクンと脈打つ。
ヤ メ テ … !
羨 マ シ イ 、
ナ ン テ イ ヤ
「ささ、信長様の元に参りましょう」
叫び声をあげそうになった寸での所で、鈴さんが私の手を引いた。
私はニコリと作り笑いを浮かべて彼女に続いた。
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