1383人が本棚に入れています
本棚に追加
「ていうか髪の毛そろそろ染めなきゃな。いいなあ、紫苑は地毛がブロンドで」
「そう? 私は憧れるな黒髪」
そう言って、裾に黒いレースをあしらったふんわりした真っ白のワンピースの上から黒いジャケットを羽織ると立ち上がる。
「もう帰るの?」
「うん。今日はさっきのオヤジで終わり。疲れたし、帰って寝る。また明日ね」
「気をつけてね! また明日」
私は手を振る皐に背を向けると裏口から路地へ出た。
少し肌寒い風が吹いている。
私の金色の髪が風に揺れた。
私の髪がブロンドなのは、両親がともにハーフだったから。
両親が死んで身よりが無くなった今じゃ、私の中にどこの国の血が流れてるか、なんてものは曖昧だ。
ハーフとハーフの子供はなんと呼ぶんだろうか。
解んないけど私は異国の血を強く引いていて、髪はブロンドだし瞳は深い緑だ。
ちっさい頃はよく虐められたけど、キャバやってる今じゃセールスポイント。
だから私はこの容姿を鬱陶しいと思ったことはない。
「ただいまー」
誰も居ないマンションの部屋の玄関を開けると誰に言うわけでもなく声をかける。
両親が死んだのが5歳の時。
あんまりちゃんと覚えてない。
身よりがなかった私は施設に預けられた。
そして中学卒業と同時にある人の所を飛び出すと、すぐに夜の街の住人になった。
私を心配してくれる人なんてどうせ居ないからどうだって良かった。
今だって私を心配してくれる人なんて居ない。
私はメイクだけ落とすと深い眠りに落ちていった。
.
最初のコメントを投稿しよう!