突然の再来

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  「紅茶です。 冷めないうちにどうぞ」 端正な顔立ちの長身の男は、髪をかき乱した女の前にティーカップを置いた。 紅茶の優しい香りが女の鼻をくすぐる。 女はかき乱した髪もそのままに、目の前に置かれた紅茶を見つめている。 「セイロンにしました。 あまり紅茶を飲まない方でも、きっと飲みやすいですよ」 男はそう言うと、女の向かいの席に別のティーカップを置く。 「僕のはシャングリラにしました。 癖があるんですが、僕は意外と好きなんです」 男は優しく笑うと、女の向かいの席に腰掛けた。 そして白く長く伸びた手でティーカップを持つと、紅茶を一口含んだ。 「・・・」 女は男を全く見ず、出された紅茶から視線を外さなかった。 「・・・名前聞いてなかったですね?」
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