一章~捕まりし者~

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ぐしゃり。 生暖かい液体が伝う。 慣れた感覚だが正気の沙汰でもあるまい。戦争に従事する前までは考えられなかったことだ。 そう兵士は声をあげることもなく横たわった。 まだ、いけるな。 血に染まった腕を拭いながら、兵士の死体を探る。 弾の入った弾倉を奪うと、意志に反して震える右足を叩いた。 あと二人だ。 走れはしないものの戦いの匂いに先程より機敏になった動きで、森を移動する。 兵士が、異変に気付いて騒ぎだす前に、背後から近寄る。ブッシュが、生い茂る森は格好の狩り場だ。敵が少人数だったことに感謝せざるおえない。  「おっと、動くな」 「な!」
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