一章~捕まりし者~

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背後を不意に取られた兵士は心底驚いた声をだしたが、叫ばなかったのは日頃の訓練の賜物だろう。 「死にたくないだろう。弾をだしたら、生かしてやらんでもない」 「屈するとでも?」  「ほう、南大国は、古い因習が残っていると見える。もし、殺されずとも、自害か?」  かまをかけたつもりだが、どうやら本当のようで兵士は押し黙った。一対一での勝負では、背後を取られた方の負けだ。現に、兵士の喉にはナイフが突き付けてある。 一引きだ。なにためらうことはない。 殺して奪って、友軍と合流しろ。 「お前は、トタルか……」 震えながら話す兵士が時間稼ぎをしているのは目に見えていた。
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