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「助かりました。ライ少尉」
首を寸でのところでつなぎ止めた男……陸呂(りくろ)は涙目で笑った。
その目の前に倒れるのは、血に塗れた敵軍の兵士だ。先程、撃った強力な麻酔弾に購うように呻いている。
それだけの訓練をしているってことか。
顔をよく見ようとしゃがみ混む。
血に濡れた髪は張り付いて、顔も泥に汚れていたが、なによりも精悍な顔立ちがそこに現れる。体つきも鍛えに鍛えたというようである。その体に異様に映ったのは、右腕にある数字と華のタトゥーだ。
「どういたしますか?」
「こいつは、トタルが撤退したことをしらんようだ。こちらとて、軽い損害ではない」
「では……、殺しますか」
普段なら肯定しただろう。だが、すこしばかり興味が沸いた。
「いいや、捕虜として連れていけ」
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