一章~捕まりし者~

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しゃべりながら、近づく男を苦悶しながら見上げる。 この顔どこかで……。 はっと、同じことを繰り返して悶絶する。 自分を撃った男だ。見紛うはずがない。 だとすればここは……敵陣か。 「ライだ」 そういった男を睨み付ける。 「殺さないのか?」 「なぜ、捕虜を殺す?交渉の手段は残しておくべきだろう」 男の言い分は正論だ。だが、違う意味も含んでいるようである。 「生憎、自分ごときを尊ぶ国じゃないんでね」 「トタルか……」 含みのある笑いをしながら男は近づいてくる。 「確かに臆しないだろうな。こんな……」 男は、そこで言葉を切った。
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