一章~捕まりし者~

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「小娘一人に」 明らかな侮蔑を目の前にして、痛みとは別な苦悶があった。 「女では捕虜には値しないというつもりか?アリダも小さいな」 虚勢ではない。これが本来なのだ。 捕虜としては我慢しよう。だが、女だからと慰みものなどにはなりたくはない。 否、なる気などはない。 そういう、意味合いは含めて男を睨んだ。 ライといったか……、まじまじと見た男は、すらりと背が高く、知的な顔立ちをしている。  だが皮肉顔だ。 「心外だ、アスカ=カネスエ、俺は君を捕虜として扱うつもりだが、何か不満だろうか」 名前を知っているということを強調したいのだろう。少なくともそうすれば、主導権は握られるのが普通だから。だが、アスカは違った。 少し考えれば解けるようなトリックなどに引っ掛かったりはしないし、捕虜でもそれなりの扱いをうけて当然だと考えている。
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