一章~捕まりし者~

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パン。 乾いた音が耳元を掠った。 続いて痛みが来る。 「くっ……」 倒れ込みそうになった体を、弾の入っていないライフルで支えて、なんとか踏み止まった。 熱い。 痛みは最初だけで、痺れるように熱い。 運のいいことに右足を掠っていた。正確には掠ってなどいない。貫通しただろうそこからは、鮮血が熱を以って滲み、紅い染みを作っていた。 手当をしなければならないような傷だ。ひどくないにしろ、放っておけば命に関わるだろう。ましてや、不衛生な密林では、その速度も早いだろう。 だが、止まるわけにはいかない。 止まることは死を意味する。
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