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「れいちゃぁぁ~ん♪」
年度末の忙しさの中、束の間の休日でゆっくり寝ていた、俺。
季節は春。
桜の花びらがひらひらと舞い、公園や道々を薄いピンク色でほんのり飾っている。
ぽかぽか陽気の昼下がりに、耳障りなダミ声で俺の眠りを妨げる“バカ”が俺の部屋にやってきた。
「また勝手に合鍵作りやがったなっ!」
「ね~!聞いて!聞いて!アタシのお話し聞いてよぉ~~~。」
……聞いちゃいねぇ。
俺の部屋は階段を上がって一番左の突き当たりの部屋。
このダミ声“バカ”は俺の部屋の隣の隣、つまり右から二番目の住人だ。
名前は姫川姫子(ヒメカワ ヒメコ)。
まあ、あのダミ声を聞いての通り、いわゆる男→女になった奴だ。
年齢は不詳。
俺と同じ時期にこの『森山荘』の住人となった。
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