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「氷山さん~~~!いるかね~~~?」
今度は少しくぐもった声が扉の向こうから聞こえてきた。
「あっ、大家さんだ♪」
ダミ声姫川はそういうと、さも自分の部屋のようにドアを開けた。
「おや?一雄ちゃんも来とったのかえ?」
「くそババアっ!」
ダミ声姫川が一気に男姫川になる。
「あれほど本名で呼ぶな言うとるやろがっ!」
そう。
“姫川姫子”ってのはいわゆる源氏名ってやつで、本名は“木村一雄”。なかなか男らしい名前である。
姫川は自分の本名を呼ばれるのが大嫌いで、“木村一雄”で呼ばれると烈火の如く怒りだす。
「大家さぁ~ん、アタシは姫川姫子。ちゃんと覚えて下さいよぉ~。」
「おや?そうだったかねぇ……。最近よく物忘れをするようになったし、しょうがないさね。一雄ちゃん。」
「ババアっ!!!」
この二人がそろうと必ずこの流れになる。
ってか、大家さん。姫川からかって遊んでるな。
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