◇始まりは…◇

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そんな話に花を咲かせながら部室に向かっていると、噂の張本人・翔太がダッシュで部室を飛び出してきた。 彼は私たちに気づくことなく、反対方向に走って行った。 「ありゃ、本当に急いでたのね~」 「本当だね」 その姿を二人で見送っていると、彼は数十メートル先の校舎の手前で急に立ち止まった。 「…ん?」 なにげに見つめる視線の先、私たちは思わぬ事態に目を見開いた。 「えっっっ!?」 「えぇぇぇ!?」 その視線の先には、照れたようにハニカミながら手を差し出す翔太。 ……と、同じく少し顔を赤らめながらもその手を握り返す少女。 「――――……」 …嘘でしょ…? にわかに信じがたい現実に言葉もでない。 仲良く歩いていく後ろ姿を呆然と見つめていると、私の代わりに沙弥が呟く。 「……彼女…?」 「…………」 翔太が女の子と手を繋いでるのなんか、今まで見たこともない。 きっと“彼女”で間違いないだろう。 …でも……だけど… 黙ったまま、複雑な思いで二人の後ろ姿を目で追っていると、沙弥は何かに気づいたように叫んだ。 「確かあの子って…!」 伺うように私をチラッと見た沙弥に小さくうなずく。 「…うん…、……礼ちゃんだ…」 「あの彩音と仲良しの子よね!?」 「……うん」 大親友…のはずだけど… ラブラブな様子で遠ざかっていく二人の後ろ姿が、やけに遠く感じる。 「きゃぁ!なんかすごぉいぃ~!!」 「…………」 目を輝かせながら二人を見送る沙弥とは対照的に、私は瞬きも忘れたように二人の後ろ姿を見つめていた。 .
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