343人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな話に花を咲かせながら部室に向かっていると、噂の張本人・翔太がダッシュで部室を飛び出してきた。
彼は私たちに気づくことなく、反対方向に走って行った。
「ありゃ、本当に急いでたのね~」
「本当だね」
その姿を二人で見送っていると、彼は数十メートル先の校舎の手前で急に立ち止まった。
「…ん?」
なにげに見つめる視線の先、私たちは思わぬ事態に目を見開いた。
「えっっっ!?」
「えぇぇぇ!?」
その視線の先には、照れたようにハニカミながら手を差し出す翔太。
……と、同じく少し顔を赤らめながらもその手を握り返す少女。
「――――……」
…嘘でしょ…?
にわかに信じがたい現実に言葉もでない。
仲良く歩いていく後ろ姿を呆然と見つめていると、私の代わりに沙弥が呟く。
「……彼女…?」
「…………」
翔太が女の子と手を繋いでるのなんか、今まで見たこともない。
きっと“彼女”で間違いないだろう。
…でも……だけど…
黙ったまま、複雑な思いで二人の後ろ姿を目で追っていると、沙弥は何かに気づいたように叫んだ。
「確かあの子って…!」
伺うように私をチラッと見た沙弥に小さくうなずく。
「…うん…、……礼ちゃんだ…」
「あの彩音と仲良しの子よね!?」
「……うん」
大親友…のはずだけど…
ラブラブな様子で遠ざかっていく二人の後ろ姿が、やけに遠く感じる。
「きゃぁ!なんかすごぉいぃ~!!」
「…………」
目を輝かせながら二人を見送る沙弥とは対照的に、私は瞬きも忘れたように二人の後ろ姿を見つめていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!