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しばらく呆然と立ち尽くしていたけど、そんな事知る由もない部員達が賑やかに部室から流れ出してきた時、私の時間もパッと流れ出した。
「おー、お疲れ!またな~」
「マネ達、早く着替えて帰れよ~」
それぞれ陽気に手を振りながら帰って行く部員達。
我に返った私は、慌てて別れの挨拶を済ませ、そそくさと部室に入った。
部室に入ると、まだ半数くらいの部員が着替えの真っ最中。
私たちはさっとそこを通り抜け、自分たちの更衣室に入った。
「彩音、友達から何も聞いてないの!?」
「……うん」
興奮したように私に詰め寄る沙弥にうなずくと、彼女は残念そうに首を傾げながらロッカーを開いた。
「え~、じゃ、まだ付き合いだしたばかりなのかなぁ~」
「…んー…」
「すごいラブラブっぽかったけど、どっちから告ったのかなぁ~…キャッ!」
「…さぁ………」
「え~、でもあの翔太についに彼女!?
なんか信じられないぃ~!!」
「…………」
沙弥はパパッと着替えながら、ノリノリで話を振ってくる。
…だけど、正直私は上の空。
相づちも打ったり打たなかったりでノロノロ着替えていると、早々に着替えを済ませた沙弥はパタンとロッカーを閉め、軽く私の肩を叩いた。
「お疲れさまぁ!先帰るね。
翔太達の事、なんかわかったら教えて♪」
そう言いながら楽しそうに出て行ってしまった。
「…はぁ………」
一人取り残された私はため息混を吐き、悶々としたまま、またノロノロと着替えを進めた。
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