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やっと制服に着替えて更衣室を出ると、部室にはもう誰もいなくなっていた。
いつもは私を待ってくれている翼や友哉すらいなくて、今日は一段と寂しさ倍増。
…何で今日に限って…
「いないのよぉ…」
八つ当たり気味にボヤきながら部室の鍵を掛けていると、後ろから大きな手が私の頭をポンと叩いた。
「誰が?」
「わぁっ!!」
誰もいないと思っていたから、不意打ちの声に本気で驚いてしまった。
「俺じゃダメだった?」
「!?」
小さく飛び上がった私が可笑しかったのか、声の主はクスクス笑って後ろから私の肩を抱き寄せた。
悪戯っぽく私の顔をのぞき込む切れ長の瞳。
「そんなに驚いた?」
「きょっ…京介先輩!!」
「ん?」
いまだ笑みを浮かべて見つめる彼を私はドキドキしながら見つめ返す。
「う…、…だって、最近先輩と会ってなかったから…」
…何日ぶりだろう…
嬉しくて、…でもなんだかちょっぴり切ないような…、そんな不思議な気持ちを噛みしめていると、彼はクルリと私の向きを変え、正面から向かい合う形を取った。
「…ごめんな、なかなか会えなくて」
「…………」
…ずるいなぁ…
好きな人にそんな風に言われたら、何も言えなくなってしまう。
私は首を小さく振ると笑顔を作った。
「…今日会えたから大丈夫!」
「……そっか…」
「うん!」
強がりだけど、…本当はもっと側にいたいけど、京介先輩に負担掛けたくないもの…!
私はその一心で“寂しかった”という本音を飲み込んだ。
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