0人が本棚に入れています
本棚に追加
二人の少女が、おれを見つめていた。
一人はセミロングの髪型で、幼い顔立ち。健気に微笑んだ表情が、なんとも言えなく可愛く見える。もう一人は長髪で、少し大人びた顔立ち。優しい笑みを浮かべて、おれを見つめていた。なぜか安心感。
しかし、おれはこの二人を知らない。知らないのに、安らぎと懐かしい温もりを感じる。
それでいて、おれは確かめようと動いた。だが、距離は縮まることはなく、歩いた感覚さえない。
動けない。声も出ない。
それでようやく気づいた。そう、これは夢だ。
そして、この夢が初めてではないことを思い出した。
ここのとこ、全く見なかった夢だから忘れていたのだ。いや、見たくなかったのかもしれない。結果、悪い夢だからだ。
『元気でね』
『ちゃんと、ご飯食べるんだよ』
こんな風に、別れの言葉を言われる。その度に胸が苦しくなり、おれはいたたまれない気持ちが込み上げられる。
……どうしてだ。何でいつも!!
『それがお前に与えられた運命(さだめ)』
知らない声が、木霊した。
それはとても冷徹で、なにかを諭すような。
『……殺されてもいいよ』
一人の長髪の少女が、おれの目の前に来ていた。
瞬間、体が勝手に動いた。
いつの間にか握り締めていた、白く装飾された刀を、少女の胸に押し当て、突き刺した。柔らかくて、いとも簡単に銀の刃は埋もれた。鮮血が滲む。
衣服が赤く染まり、少女は笑顔。しかしその表情は一変して、苦しく吐血。
最初のコメントを投稿しよう!