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『……ちゃんと生きてね』
もう一人のセミロングの少女の目の前に、影が揺らめいた。
骨の姿をした、布を羽織った死神。その片手には、怪しく光る紅い刃で、黒く装飾された刀。
紅い刃は、その少女に振り下ろされた。少女の表情は変わらず、ごろりとズレ落ちる。上半身ごと、丸ごと血肉、骨を斬られた。
斬られた部分から血が吹き出し、周囲に血痕を残す。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ──!!」
動き出したおれの身体は、無我夢中で走り始めた。
夢だとわかりきっていたが、それでもリアルに感じる血の錆びた臭いと肉を貫いた感覚がこびりついたように取れない。剥がれない。
夢の中で自分自身が崩壊しそうだった。
夢は、闇と絶望に包まれた暗黒の世界。
けど、夢はいつか醒める。
そしたらまた、いつもの世界に戻れる。
ずっと走った。
ずっと暗闇を走った。景色は変わらない。
そう思ってた瞬間、光が見えた。
おれは必死に手を伸ばす。
光は、温もりを感じさせ、身体を包んでいく。
光に飲み込まれる瞬間、再び声が聞こえた。
『光と闇。そのどちらも、お前の中にある。全ては、お前の中に──』
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