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王は老工の息子に言う。
今度はお前の父を狂わせた「平らは丸い、丸いは平ら」という背理を逆に取り込み、平らで丸く、丸くて平らな城を打ち立ててはどうか。
数年後、遂に森の中にその城――滑りに滑る円形の石の台地の中央に望楼が立ち、近づく者はずり落ちてしまう――が完成する。
その城を前にして老工の息子も王も、壮年の筈なのに既に老いの翳に覆われている。
老工の息子は「何故たったひとりだけの城を欲した理由」を王に問い、その問いに答えた王は微動だにしない。彼はその城に入ることなく息絶えていたのだった。
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