0章~意味なんか存在しない始まり~

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 “汝、隣人を愛せ”  一度は聞いた事がある言葉だと思う。  聞いたことが無い人は、とある偉人の言葉だと頭に入れておいてくれ。  ところで、この言葉を言った人を知っているだろうか。  まあ待て、そう急がないで。  別に知らなくてもいい。  知っていたら尚良いが、知らなかろうと、今回はそこまで問題ではないのだ。  どこのお偉いさんが、何時どこでこんな言葉を言ったのか。  今回問題なのは、これを言った人が二人居るということ。  一人は、発言が後世にまで残る、偉人サン。  そしてもう一人は……魔女裁判にかけられて殺されたとある名もなき女性。  はてさて、運命とは面白い物で、同じ考え、同じ思考、同じ感情、同じ脳の塩基配列をしていようと、違った答えをこの世に示してくれる。  そう。  それはまるで立体のように、見る角度でさまざまに形を変えてしまう。  四角形に、円形に、三角形に。  その他称、魔女サンは死ぬその瞬間まで愛を説き続けていたらしい。  周りの人の為に尽くしなさい。  他人の幸せを第一に考えなさい、と。  言わせてもらうならば、実に滑稽で、愉快で、馬鹿らしく、どうでもいい話だ。  結局、全ては自分の為なのに……。  だって、そんな魔女さん。  遺言が『タスケテ』なんだか笑っちゃう。  もちろん、英語だよ。  ヘルプミーさ。  自分の為に他人に尽くす。  自分の為に、自分の為に――。  そう、それはあくまで――。  さて、長々とこんな事を語った理由は実に簡単だ。  次の一言を言いたいが為。  その為だけにこの長くも短くもない――そもそも存在意義の無い章は存在するのだろう。  その一言とはつまり、今さんざん語ったこの話は全て――。 「嘘です」
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