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“汝、隣人を愛せ”
一度は聞いた事がある言葉だと思う。
聞いたことが無い人は、とある偉人の言葉だと頭に入れておいてくれ。
ところで、この言葉を言った人を知っているだろうか。
まあ待て、そう急がないで。
別に知らなくてもいい。
知っていたら尚良いが、知らなかろうと、今回はそこまで問題ではないのだ。
どこのお偉いさんが、何時どこでこんな言葉を言ったのか。
今回問題なのは、これを言った人が二人居るということ。
一人は、発言が後世にまで残る、偉人サン。
そしてもう一人は……魔女裁判にかけられて殺されたとある名もなき女性。
はてさて、運命とは面白い物で、同じ考え、同じ思考、同じ感情、同じ脳の塩基配列をしていようと、違った答えをこの世に示してくれる。
そう。
それはまるで立体のように、見る角度でさまざまに形を変えてしまう。
四角形に、円形に、三角形に。
その他称、魔女サンは死ぬその瞬間まで愛を説き続けていたらしい。
周りの人の為に尽くしなさい。
他人の幸せを第一に考えなさい、と。
言わせてもらうならば、実に滑稽で、愉快で、馬鹿らしく、どうでもいい話だ。
結局、全ては自分の為なのに……。
だって、そんな魔女さん。
遺言が『タスケテ』なんだか笑っちゃう。
もちろん、英語だよ。
ヘルプミーさ。
自分の為に他人に尽くす。
自分の為に、自分の為に――。
そう、それはあくまで――。
さて、長々とこんな事を語った理由は実に簡単だ。
次の一言を言いたいが為。
その為だけにこの長くも短くもない――そもそも存在意義の無い章は存在するのだろう。
その一言とはつまり、今さんざん語ったこの話は全て――。
「嘘です」
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