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「その瞳を見せてくれないか?」
「見てはいけない」
「何故だ?何をそんなに隠す?!」
「全く、すぐカッカするな。弦一郎」
名を呼ばれ、何故か少し安堵感を感じる。
知りたいと気持ちばかりが焦るのとは裏腹に、何故か、目の前の少年と話すと心安らぐ気持ちもする。
「良いだろう。口外しないと誓えるなら」
「誓う。自分の命に賭けて誓おう」
"彼"は格子ギリギリまで近付く。
それに倣って弦一郎も格子に寄り掛かる形になる。
側で見ていても白い肌の色。
赤い夕陽が気の毒な位に。
白い肌に対比して、皮肉な程、紅い着物。
未だに閉じられた、睫毛に縁取られて居る切れ長い瞳。
それが、ゆっくりと開かれた。
其れは、金色をしていた。
とても…とても美しいと感じた。
この金色の瞳が映し出す世界は、この漆黒と紅しか無いのかと思うと
胸が苦しくなった。
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