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その夜、夕暮れと共に降り出した雨は雨足を強めていった。
大荒れの天気せいか、父をはじめとした家の者たちは帰って来なかった。
弦一郎は然して気にはしていなかった。
否、それを気にする所では無かったのだ。
"蓮二"の事について、答えの無い問いを、ただただ繰り返していたのだ。
夜半過ぎの事だった。
一人、自室で今日の事を思い出し思いにふけていた時、扉の音が鳴った。
弦一郎の自室のある館は父の外国かぶれのお陰で出来上がった洋館だった。
ガチャリと扉を開けると、そこには、小間使いとして雇っている幼馴染みの精市が居た。
その表情はとても深刻だった。
「入っても良いか?」
「ああ」
わざわざ外国から取り寄せたと言うテーブルを囲んで二人は向かい合った。
普段は専ら正座をする弦一郎も、このお陰で椅子と言うものによく座る様になったのだった。
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