異端児の過去

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星も月も無い夜だった。 湿った空気の中で、瓦斯灯の明かりに浮かび上がった 七分咲きの櫻がとても綺麗だった。 --------- 真田家には、決して口外にしてはならない事実があった。 それは、当主の本妻が鬼の子を産んだと云う事。 その鬼の子の瞳は、薄い飴色………若しくは、光の加減に依って金色を映した。 家の者は、これでは家名が穢されると、その鬼の子を地下牢に籠らせ、決して誰の目にも触れさせない様にした。 そして、丁度その何日か前に産まれた当主の愛人の子を真田家の長男とし、弦一郎と云う名を授け 大事に大事に育てた。 弦一郎は何も知らぬまま、十五年の年月を過ごした。
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