72人が本棚に入れています
本棚に追加
星も月も無い夜だった。
湿った空気の中で、瓦斯灯の明かりに浮かび上がった
七分咲きの櫻がとても綺麗だった。
---------
真田家には、決して口外にしてはならない事実があった。
それは、当主の本妻が鬼の子を産んだと云う事。
その鬼の子の瞳は、薄い飴色………若しくは、光の加減に依って金色を映した。
家の者は、これでは家名が穢されると、その鬼の子を地下牢に籠らせ、決して誰の目にも触れさせない様にした。
そして、丁度その何日か前に産まれた当主の愛人の子を真田家の長男とし、弦一郎と云う名を授け
大事に大事に育てた。
弦一郎は何も知らぬまま、十五年の年月を過ごした。
最初のコメントを投稿しよう!